平成の印象深い教科書作品6選【平成中期から採用】 | 国語教科書の素材辞典

平成の印象深い教科書作品6選【平成中期から採用】

主に【平成の中期】から国語教科書に載り始めた、印象に残った作品を6つ取り上げました。

バースデイ・ガール(村上春樹)

一つめは、村上春樹の「バースデイ・ガール」です。

僕の視点から、主人公の彼女が二十歳の誕生日の日、アルバイトをしていたレストランで体験した不思議な出来事が語られるお話です。(→「バースデイ・ガール」の情報を見る

様々な偶然が重なって、彼女は初めてレストランのオーナーに会います。するとオーナーは、彼女にバースデープレゼントとして願いを一つだけかなえてあげる、と告げます。

いったい彼女は何をお願いしたのでしょうか。読み終えた後には春樹ワールドにハマっているかも。

デューク(江國香織)

二つめは、江國香織の「デューク」です。

愛する飼い犬が亡くなり、悲しみの中でアルバイトに向かう私に訪れた、切ない出会いのお話です。(→「デューク」の情報を見る

「デューク」は、私の飼い犬の名前です。デュークが亡くなり、私は深い悲しみに沈みますが、翌日もアルバイトに行かなければなりません。泣きながら電車に乗ると、前に座っていた少年が彼女の様子を見て、席をゆずってくれました。

その少年は、泣きべその私を周囲の目から守るように、終点までずっとかばってくれました。気持ちが落ち着いた私は、その日はアルバイトを休むと連絡を入れ、少年と街で過ごします。

日が暮れたころ、少年が私に真実を告げます。

この作品は、大学入試センター試験の国語の問題に採用されたとき、受験中に涙を流す受験生が続出したという逸話もある、悲しくも感動する物語でした。

カレーライス(重松清)

三つめは、重松清の「カレーライス」です。

ゲーム時間のことで父親に叱られ、逆恨みしてもう口をきかないとかたくなになる主人公の少年ひろしの姿から始まります。(→「カレーライス」の情報を見る

ところが母親から、息子が口をきかないので父親が弱気になっていると聞かされると、自分も悪かったなと思い直します。

そのうち、母親の仕事の帰りが遅くなる週に差し掛かり、ひろしと父親は、二人で夕食にカレーライスを食べます。ひろしは自分から謝ってしまおうと思いつつも、なかなかきっかけがなく、だまったままです。

最後に仲直りするきっかけは何だったのでしょうか。難しい年ごろの子どもと父親の関係に共感する生徒さんも多かったのでは。

あの坂をのぼれば(杉みき子)

四つめは、杉みき子の「あの坂をのぼれば」です。

少年が、うら山を一つ越えれば海が見えるという祖母の話を信じて、山道を歩き海を目指すお話です。(→「あの坂をのぼれば」の情報を見る

海を目指そうと行動を起こした背景には、少年の中に思うようにいかない日々の生活への晴れない気持ちがありました。しかし、いくら歩けども山ばかり、いっこうに海は見えてこないのです。

はたして少年は、海にたどりついたのでしょうか。少年の姿に、自分の姿を重ねた同世代の子もいたかもしれません。

世界一美しいぼくの村(小林豊)

五つめは、小林豊の「世界一美しいぼくの村」です。

物語の場面は内戦が続くアフガニスタン、主人公のヤモが、美しい自分の村で作った果物を売りに父親と一緒にバザールへ行くお話です。(→「世界一美しいぼくの村」の情報を見る

ヤモの住む小さな村・パグマンでは、実りの季節を迎えていました。兄が兵隊になり戦争に行っているので、ヤモは初めて父と一緒にバザールに収穫した果実を売りにいきます。

初めて収穫物を売るのでとまどうヤモ。そんな彼に、戦争で足をなくしたおじさんが話しかけ、パグマンのサクランボは世界一だと褒めてくれます。そしてサクランボはすべて売れ、ヤモにはさらにいいことが起こります。

長らく続くアフガニスタンの内戦は、日本とはあまり関係のないことのようで、普通の市民の暮らしを知らない人も多いと思います。「世界一美しいぼくの村」は、そこに暮らす普通の家族を切り取って、戦争の残酷さを伝える作品といえるのではないでしょうか。

ゆうすげ村の小さな旅館(茂市久美子)

最後の六つめは、茂市久美子の「ゆうすげ村の小さな旅館」です。

国語教科書では、第一章の「ウサギのダイコン」が取り上げられています。旅館を切り盛りするつぼみさんのところに手伝いに来てくれた娘さんとのエピソードが描かれる、安らかな物語です。(→「ゆうすげ村の小さな旅館」の情報を見る

ゆうすげ旅館は工事関係の泊り客が増えて大忙し。つぼみさんは買い物に行った帰りの道ばたで、だれか手伝ってくれないかしら、とつぶやきます。

すると翌日、つぼみさんが畑を貸している宇佐美さんの娘さんが手伝いにきてくれます。よく働き、ダイコン料理が上手で大助かり。そして泊り客もつぼみさんも、なぜか最近耳がよくなった気がします。

忙しい時期が終わり娘さんは帰っていきました。つぼみさんは翌日お礼にいくと、そこで種明かしがされます。読み終えた後に、ウサギとのふれあいに心が温まったのではないでしょうか。