懐かしい!平成初期から読まれる国語教科書作品7選 | 国語教科書の素材辞典

懐かしい!平成初期から読まれる国語教科書作品7選

主に【平成の初期】から国語教科書に載り始めた懐かしい作品を、厳選して7つピックアップしました。

握手(井上ひさし)

一つめは、井上ひさしの「握手」です。

小さいころに両親を亡くし、外国人の修道士が運営する児童養護施設で育った私が、大人になって久しぶりに修道士に再会するお話です。(→「握手」の情報を見る)

修道士は、故郷に帰るため私にお別れを告げにくるのです。タイトルの「握手」は、当時の修道士の握手は力がとても強く、私が子供心に恐れていた、というトピックスから来ていますが、久しぶりに修道士と交わした握手は弱くやさしくなっていました。

昔との違いに私は何を感じたのでしょうか。読み終えた後は、時の流れや、老い、別れについて考えさせられるかもしれません。

素顔同盟(すやまたけし)

二つめは、すやまたけしの「素顔同盟」です。

僕の生きる社会はみな同じ笑顔の仮面をつけるよう義務付けられた世界だ、という現実社会を風刺するような物語設定で、社会に疑問を持ちいろいろな表情を出したい僕の一人語りで進むお話です。(→「素顔同盟」の情報を見る

僕が感じる表情に違いがあっていいはずという問題意識は、先生や友達には理解されぬまま日々が過ぎていきます。あるとき僕は偶然、町はずれの公園でこっそりと仮面を外している少女に出会います。

僕は、彼女が自分と同じ思いの人だと分かったにもかかわらず、勇気が出せず声をかけられなかったのです。僕は深く後悔しました。

その後の僕はどういう未来を選んだのでしょうか。現実社会に照らして、いろいろ考えさせられる作品でした。

小さな手袋(内海隆一郎)

三つめは、内海隆一郎の「小さな手袋」です。

小学三年生のシホは、雑木林の中で毛糸人形を編む一人のおばあさんに出会います。仲良くなって毎日通いますが、ある出来事がきっかけで通うのをやめてしまい、3年後に再会するまでのお話です。(→「小さな手袋」の情報を見る

雑木林のおばあさんは、脳卒中を経験し、近くのリハビリ病院に入院している方でした。手を細かく使って毛糸人形を編むのもリハビリの一環だったのです。

そして、シホ自身の祖父も同じ脳卒中で倒れ、こちらは亡くなってしまいました。祖父の死に衝撃を受けたシホは、雑木林に行かなくなります。

その後、おばあさんはどうなったのか、3年後に明らかになります。おばあさんと少女の切ないふれあいが心に残った方もいるのではないでしょうか。

そこに僕はいた(辻仁成)

四つめは、辻仁成の「そこに僕はいた」です。

子どもの僕と片足が義足の友達との関係性と、僕自身の心の成長を描いたお話です。(→「そこに僕はいた」の情報を見る

僕の遊び仲間に片足に義足をつけた友達がいた、というくだりから話は始まります。一部の大人は、障がいを持つ友達に気を付けるよう僕に言い、僕の頭に彼を特別扱いする考えがこびりつき、だんだん彼と遊ぶことに気が重くなっていました。

ところが、僕が遊びの中で義足の友人の投げた石で片目を怪我し、治るまでの間片目が不自由になったことで、僕の心境に変化が現れます。

障がいのありなしだけで相手を色眼鏡で見ず、個人をしっかり見ようという明確なメッセージを発する作品ではないでしょうか。

わすれられないおくりもの(スーザン・バーレイ)

五つめは、スーザン・バーレイの「わすれられないおくりもの」です。

いろいろな動物たちが仲良く助け合って暮らす世界で、アナグマの死をきっかけにした他の動物達の姿が描かれます。(→「わすれられないおくりもの」の情報を見る

高齢のアナグマは体が弱り、自分の寿命が近づいたことを悟ります。ある朝、アナグマはいつものように起きてこず、天国へ旅立ってしまいました。

アナグマとの別れに悲しむほかの動物たち。だれもが、アナグマに助けられた思い出を語り、悲しみを分かち合います。ですが、いつまでも悲しんではいられません。春になるころにはみな、アナグマの死を受け止め...というお話です。

原本である絵本のすてきな挿絵がいくつも使われ、記憶に残っている方も多いかもしれません。

きつねのおきゃくさま(あまんきみこ)

六つめは、あまんきみこの「きつねのおきゃくさま」です。

はらぺこのきつねが、出会ったひよこやあひる、うさぎに親切にし自分の家に泊める、ほほえましいお話です。(→「きつねのおきゃくさま」の情報を見る)

はらぺこのきつねがやせたひよこを見つけ、食べてしまおうと思いましたが、きつねの怖さを知らないひよこがどこかによい住み家がないかと聞くので、もっと太らせてからにしようと家に連れて帰り育てます。

きつねに親切にしてもらったひよこは、どこかよい住み家がないかと聞くあひるに、きつねの家がよいとすすめます。

次々とくるおきゃくさまに対する、きつねの親切な行動が描かれるのですが、ラストはちょっと悲しくなってしまいます。

ニャーゴ(宮西達也)

最後の七つめは、宮西達也の「ニャーゴ」です。

三匹の子ねずみが天敵の猫に出くわしピンチに。ところが猫が怖いと知らない三匹は、猫を桃取りに誘い...というお話です。(→「ニャーゴ」の情報を見る

三匹の子ねずみはおしゃべりしていて、先生が猫を見たら逃げるよう説明するのを聞いていません。その後、桃を取りに出かけようとすると猫に出くわしてしまいます。三匹が桃取りに誘うと、猫はあとでで食べてやるぞと下心をもってついてきます。帰り道、猫が子ねずみたちを怖がらせようと、ニャーゴ!と叫ぶと...

三匹の子ネズミはどんな対応をしたのでしょうか。読んでいる方がハラハラする展開から、最後にほっこりします。